COLUMN2021.07.06 UP

全国のすてきな額縁店 | 2

全国のすてきな額縁店 第2回 京額様

京都で生まれ育った岩滝社長は、着物や日本舞踊などの日本文化にも造詣が深く、着物リメイクのアートフレームやインテリア屏風などのプロデュースもされていて、現代的な和の額装デザインに特に定評があります。

イメージや希望を吸い上げて、プロの知識と技術、そしてセンスで形にしてくれるフレーマー(額装師)とのフレーム誂えは、本当に楽しく特別な体験です。今回はどのような接客提案をされているのか、岩滝社長に詳しくお話を伺いました。


京額

<京都北山本店>
〒603-8053 京都府京都市北区上賀茂岩ケ垣内町90 フォレスト北山 1F
TEL 075-702-0003  FAX 075-702-3993

<大阪支店 フレームハウス京額>
〒530-8350 大阪市北区角田町8番7号 阪急うめだ本店10F 『うめだスーク』北街区
TEL 06-6313-2339 (直通)

WEB  https://kyoto-kyogaku.com/
Instagram  @kyogaku1919


ラーソン・ジュール
店内には着物や帯、手ぬぐいなど、様々な額装例が飾られて、「絵画以外も額装することでアート装飾になる」ということを、わかりやすく提案されていますね。

京額 岩滝社長
京都という土地柄、そしてお店の個性としても、日本の伝統工芸品の美しさを額装によってアートに仕立てることを提案したいと思っています。実際ディスプレイからアイディアを得られて、愛着のある着物や帯を持ち込まれるお客様が多く、切らずに額装できる点が喜ばれています。ステイホームの影響か、このところ特に帯の額装依頼が目立って増えました。

手ぬぐいはそれぞれのメーカーから販売許可をいただいており、展示品をそのまま販売することもできます。京都には老舗の手ぬぐい屋さんがありますし、手ぬぐい額装もお店で人気のあるもののひとつです。着物も手ぬぐいも、実用のために作られたものですが、額装して飾ることで芸術性の高いデザインと技術を存分に楽しむことができるとも言えます。


動画ページはこちら

ラーソン・ジュール
最近人気が高まっているスカーフ額装も、和洋の違いはあっても、伝統の染色技術と美しいデザインを味わう、という点で似ていますね。

京額 岩滝社長
私たちのお店でもスカーフ額装は30代40代のお客様中心に人気があり、阪急百貨店内にある大阪支店は、スカーフを購入されて持ち込まれる方もとても多いです。絵画を買える場所はオンライン以外では減ってきており、「どこで買えるのかわからない」という声もよく聞きます。スカーフは各ブランドが意匠と技術を凝らしたものを毎シーズンたくさん出しているので、これをアートと捉えて飾ろうという人が増えているのでしょう。スカーフなら売り場も価格も明解だし、同じサイズの絵画と比べたら価格も高くないと言えます。

ラーソン・ジュール
店頭に飾られているスカーフの額装例も華やかで美しいですね。額装方法についてお聞かせください。


2021年春発売の新商品、イタリア製のLucidoコレクションを使用。イタリアならではの深みのある発色と艶感の赤がエレガント。

京額 岩滝社長
ほとんどのお客様がスカーフをアートとして飾るために来店されるのですから、完璧な見映えに仕上げることが重要と考え、表具の技術でしわひとつない状態に裏打ちして額装します。京都にはたくさんの腕の良い表具屋さんがありますし、お店では昔から書の額装依頼も多いためお付き合いも長く、作品の種類に応じて最適な職人さんに依頼することができます。信頼してお任せできるところに依頼するので、相応の費用はかかりますが、お客様の大切な品物を扱うのですから、やはり確実にきちんとしたものに仕上げることで、お客様に安心してお預けいただけるようにすることが一番です。スカーフに限らずどのような作品でも、額装されるということは、お客様にとって特別なものであるのは間違いありません。ですからひとつひとつの作品と向き合って、作品とお客様にとってベストの選択肢をご提案することが私たちの役割です。

ラーソン・ジュール
接客と額装デザイン決定のプロセスをご紹介ください。

京額 岩滝社長
額装というのは、作品とお客様の間にあるストーリーを目に見える形にすることと考えているので、できる限り詳しいお話を伺います。どのような作品なのか、なぜ飾りたいのか、どこに飾る予定なのか、などの情報を集めていきます。デザインのお好みを把握するためには「嫌いなもの、嫌いな色は何ですか?」という質問をよくします。どのようなデザインが好きか、と聞かれても選択肢が分からない状態では答えようがないものですが、嫌いなものは何もない状態でも挙げられるでしょう。予算や仕上がりサイズなどの条件も確認します。こうして集めた様々な情報を元に作品をじっくりと観察し、額装した作品が飾られた完成予想図をイメージしながら熟考し、選んだフレームと額装デザインをご提案します。選択の理由やデザインのポイントをご説明することも、接客で最も大切にしていることのひとつです。お客様が複数の選択肢で迷われる場合はサンプルをお渡しして、ご自宅で見ていただくようお勧めすることもあります。本当にご満足いただけるものに仕上げるために、いかにお客様に寄り添うことができるか、納得していただくことができるか、を常に考えています。


たくさんのフレームサンプルは仕上げ・色別にわかりやすく分類されている。社長をはじめ接客スタッフは皆さん頭の中に全て入っているため、非常にスムーズに提案がなされる。

ラーソン・ジュール
京額さんはモダンな和の額装に特に定評がありますが、スタイルへのこだわりや、デザイン構築のポイントをお聞かせください。

京額 岩滝社長
和モダンというより和洋折衷です。現代日本の住空間とライフスタイル自体が和洋折衷なものになっています。白い壁の洋室中心とは言っても住むのは日本人ですから、靴を脱いで過ごす室内では椅子やソファがあっても床に座ることも多いし、天井高も西洋のように高くないので、壁へのアートの飾り方も変わってきます。そのような空間に西洋のものをただ当てはめるのも違いますし、和室や床の間に飾っていたような掛け軸や色紙額などをそのまま飾るのも合わないので、和と洋を良いバランスで掛け合わせたデザインが必要になります。


和洋ミックスの洗練されたデザイン


店内にぎっしりと飾られた額装例を楽しく眺めながらアイディアやインスピレーションが得られる


あらゆるものの額装が可能、と言えるほどさまざまな立体物も扱われている

京額 岩滝社長
時代の流行を捉えた提案ができるよう、家具や照明などのインテリアは常にチェックしていますし、たくさんの良いものを見て感性を磨くことが重要なので、時間があればとにかく歩きます。幸い京都はお寺や街並み、伝統工芸などの美しいものの刺激に溢れています。特に色彩感覚のすばらしいものが多く、額装デザインの配色にも活かしていますが、ラーソン・ジュールの扱う輸入マットボードは微妙な色味が豊富に揃うので重宝しています。

マットボードの色の組み合わせとグラフィカルなレイアウトが個性的で美しい額装デザイン

発想の転換で額装提案のバリエーションを広げることも重視していることのひとつ。本来キャンバス画を入れるための既成額を使うと、立体物の額装が手軽に楽しめる。

ラーソン・ジュール
お話を伺って、改めてアートと額装に対する岩滝社長の真摯な姿勢と情熱が強く伝わりました。コラムを読んで、是非直接社長に額装相談をしたい、と思われる方もいらっしゃると思うのですが、お店にはどのくらい出られていますか?

京額 岩滝社長
北山のお店には週の半分程出ていますが、阪急のお店にはあまりおりません。だからこそどの社員が接客しても、京額ブランドに沿った提案ができるように教育し、また個々のスタッフならではの個性と特性を伸ばすことが経営者としての務めです。私が経験から得た知識やノウハウ、会社組織としての理念は、全ての社員にしっかり受け継いで共有していますので、どの店舗でもどのスタッフでもどうぞ安心してご相談ください。

阪急うめだ本店10Fにある大阪支店「フレームハウス京額」。額の誂えは初めて、というお客様も多いが、リピート率も非常に高い。ウェブでの情報発信にも力を入れている。

大阪支店店内にもさまざまな額装例が飾られている。カットしない着物や帯の額装も人気があるが、カットしてテーブルセンターやクッションなどを作られた後に、残り生地を額装仕立てにする依頼などもある。

ラーソン・ジュール
本店のある北山エリアはおいしいお店もたくさんあるそうですね。この記事を見て来店されたいというお客様のために、いくつかお勧めをご紹介いただけませんか。

京額 岩滝社長
個人的なお勧めはブリアンさん(パン)、キャピタル東洋亭さん(レストラン)、マールブランシュさん(ケーキ)、よしむら北山楼さん(お蕎麦)、権兵衛さん(おうどん)、進々堂さん(パン)などで、全て京額から徒歩5分くらいのご近所です。京都はおいしいパン屋さんも多いことで知られていますが、北山にもとても多くのパン屋さんがあり、食べ歩きも楽しいですよ。

ラーソン・ジュール
歴史あるものも新しいものも、両方が揃って調和している京都の町の楽しさは、グルメにもよく表れていますが、京額さんの魅力にもつながっていると言えますね。ありがとうございました。