COLUMN2020.11.25 UP

額縁屋さんの「フレームのある生活」 | 15

ベテランフレーマーの誇りとこだわりが詰まった「フレームのある生活」

山岸さんが額縁業界で仕事を始めたのは22歳のとき。
都内の老舗額縁店に長く勤めた後にラーソン・ジュールに入社され、営業担当としてそれまでの幅広い経験と知識を活かして小売店店頭での販売活動をサポートされてきました。
今回はご自宅紹介の他、ご自身の額縁業界でのキャリアについても興味深いお話を伺いました。


10代の頃からギターとベースを演奏していて、今でもバンド仲間と機会があればライブ活動をしているそう。(現在はコロナ禍で自粛中)

オーダーフレーム(カスタムフレーム)システムの成り立ち

ラーソン・ジュールに入社して8年、主に東京、神奈川、東北を回る営業担当の山岸さん。それ以前は老舗額縁店で額装コンサルティングを提供するベテランフレーマー(額装師)だったとのことですが、額縁業界での経験は合わせて何年くらいになりますか?

「22歳からなので、もう40年にもなります。実はラーソン・ジュール日本法人の前身となるレトラセットという会社との関りがスタートです。当時レトラセットは“フレームマスター72”という画期的なシステムを導入したことで、日本の額縁業界に大きな変革をもたらしました。それまでの特注フレームは一から手作りされたもので、注文から完成まで1ヶ月はかかる高級品でした。“フレームマスター72”の『72』は72時間のこと。72時間つまり3日で完成するオーダーフレーム・サービスの登場は、大きな驚きでした。それから40年が経ち、ラーソン・ジュールでは現在、当たり前のようにご注文の翌営業日にオーダーフレームを出荷しています。」

 

フレーマーとして28年勤務した老舗額縁店での経験

山岸さんは今でもフレーマーとしての経験を活かして作品額装の提案をされたり、ときには自ら加工をされることもあるそうですね。額装デザインのプロセスについて教えていただけますか?

「お店時代は『額装はおまかせで』と作品を持ち込まれるお客様が多くいらっしゃいました。おまかせというのは私の好みで自由に額装することではなく、実際にはあくまでもお客様の好みを尊重しながら作品を引き立てる額装デザインの選択肢を提案していくということであり、フレーマーの腕の見せ所です。これは私だけでなく全国の額縁小売店さんの店頭で働く全ての額装担当スタッフの方々が日々行っていることです。プロの額装コーディネーターであるフレーマーさんたちに信頼されるような営業活動をいつも心がけています。」

額縁店に勤めていた頃のエピソードもたくさんありそうですね。思い出深いものを紹介していただけますか?

「ある刺繍作家の方が私の額装を非常に気に入ってくださり、リピーターになっていただいたときはとても嬉しかったです。作家さんが刺繍仲間の方をたくさん紹介してくださり、クリスマスシーズンに30点ほどの刺繍作品の額装を請け負ったときは大変でしたが、本当にやりがいを感じました。
本物の名画の額装を依頼されたこともあります。〇億円のもの…と言われてびっくりしました。無事額に納めることができましたが、忘れられない思い出です。」

 

こだわりの一枚をシンプルに飾る

額縁業界でこれほど長いキャリアを持つ山岸さんのご自宅に飾られているのは、どんなフレームでしょうか?3 LDKのマンションに奥様と娘さんの3人暮らしだそうですね。

「リビングには、フレーマー時代に額装コンテストに出品した額装品を飾っています。木の作品のフォルムに合わせて、マットを3枚重ね、それぞれ形に沿って手切りしています。ベンブリッジの保存額装用マットを使いましたが、40年程経っているのに全く色褪せもシミもありません。長く安心して使える保存品質マットであると、胸を張って言える商品です。」

「和室に飾っているのは篆書作品です。小売店で働いていた頃、書家の先生を招いた店頭イベントを担当した際に、先生が記念にと私の家族4人の名前を書いてくださったのです。長女は昨年結婚して、今は3人暮らしになりました。紙の耳を活かすために和紙を張り込んだ台紙に固定して、国産のフレームを合わせました。

「玄関に飾っている楕円のミラーは、昔レトラセットが販売していたフランスのアルディというメーカーのものです。うちに飾っているフレームはどれも古いものが多く、現在ラーソン・ジュールで扱っている商品が紹介できないのが残念なのですが…。フレームも新しい商品が発売されたり取り扱いを終了したり、結構種類の入れ替えがあるものなので、お気に入りのデザインを見つけたら逃さず手に入れることをお勧めしたいです。」

もっとたくさんの額を飾られているのかと思いましたが、すっきりした装飾スタイルにこだわりを感じました。

「たくさんのものを飾るのはあまり好きではなく、これと決めたものをひとつの壁に一点だけ飾ることにしています。気に入ったものを長く大切に飾っていますが、今でも額装品を見るとそれぞれの作品にまつわる記憶が生き生きと思い出されます。ひとりのフレーマーとして、作品を飾ることの楽しさと魅力を伝え続けていきたいです。」

ベテランフレーマーである山岸さんの額縁・額装への愛情と真摯な姿勢が伝わりました。

次回は番外編としてラーソン・ジュール本社内のショールームなどをご紹介する予定です。
お楽しみに!